めちゃくちゃ

2011年9月

 うちの村のNKおじさんは、ルンブール谷で最初に出来た小学校(今はムスリムの子供たちが通う)の用務員の職についていたが、昨年60歳を越えたので晴れて退職になった。

 

 かなりのまとまった退職金が出て、毎月恩給もつくし、用務員の職は彼の息子の一人に受け継がれるはずだった。しかし、NKおじさんはあと10年ぐらい給料をもらいたいと、チトラールの教育機関やらどこやらに掛け合い賄賂を払って、IDカードの年齢を8歳若く52歳に、小学校卒業なのを高校卒業と書き換えてもらい、念願かなってさらに8年間用務員の職を維持できることになった。これで万々歳というところだろうが、本人は「一年間あちこち奔走した挙句、賄賂に15万ルピーもかかった。とほほ」と嘆いていると言う。

 

 この手の話はよく聞く話で、パキスタンでは賄賂とコネですべてが可能となる。逆にお金とコネがないと、いくら頭が良くても、みんなのために働こうという強い意思があっても、頭角を現すことはことはできない。

 

 役人たちは自分の今のポストで、給料以外にどれだけ稼げるかに精を出し、一般庶民、弱い人たち、貧乏人たちからほとんど恫喝に近い形で賄賂の金や物をせびる。せびられる方は賄賂の金を作りだすために、他に方法がないから詐欺やら二重帳簿や出来る限りの悪いことをする。それをみんながやっているから、ほとんどそれは当たり前で目立ちはしないし、悪いとわかっていても誰も何も言わない。

 

 先日は、ルンブール谷のムスリムのボーダーポリス(国境警備隊)が逮捕された。彼はイスラム世界では堅く禁止されているタラ(焼酎)をカラーシャから安く買って、チトラールに持って行っては高く売り、その金でハッシシを仕入れて谷に持ち帰り高く売るという闇の商売をここ数年行っていて、しまいに捕まってしまったわけだ。この行為は明らかに違法であり、普通だったら職を取り上げられ、何年間か刑に服さねばならないはずだが、彼の叔父さんがサウジアラビアで稼いでいてお金があるので、きっとお金を積んで容疑書を書き換えてもらい、何事もなかったかのように職に復帰するだろうという話だ。

 

 「そんなのおかしいよ。悪いことをしたらそれ相当の罰を与えないと、他の人もまねしてやるから、いつまでたっても悪いことはなくなりはしないよ」と私が言うと、「ボーダーポリスどころか、取り締まる側の警察自体が同じことをやっているからどうしようもないよ」と言われた。警察は酒やハッシシに関して他人が売り買いしたら取り締まるが、自分たちは特権を生かしてせっせと稼いでいるということだ。こういった話を聞くと、腹が立って腹が立って気分が悪くなる。

 

 こういった悪事がまかり通るような国には未来はない。援助金もくれるな。そういった援助金のほとんどが平気な顔で悪事をしている役人や金持ちたちの懐に入るばかりで、貧富の差をよけい広げているということに気付いて欲しい。援助をするなら国や大きい機関を通さないで、必要とする人々に直接手渡してもらいたい、公共工事をする場合は現場を訪れ、監視してほしい、と声を大にして言いたい。