2013年4月
ルンブール谷住民の電気の主なる供給源であるルンブール水力発電所(これは2005年、日本政府の草の根援助で、私たちのNGOが受けて造ったたものですが)の貯水タンクと水路が崖くずれによって壊れたことは、3月7日のブログでお知らせしました。それが天災でなく人災によって引き起こされたことがわかり、口惜しい思いでおります。
カラーシャ三谷を含むチトラール地方にはタリバンもおらず、チトラール・スカウト(兵)が存在するものの、ルンブール谷にはこれらチトラール兵はおろか警官すら駐留していませんでした。
ところが、アフガニスタン国境の治安が悪化する2年前から、カイバル・パシュトゥンクァ州で8000人もの臨時の警官が雇われ、うちのバラングル村でも、「AKIKOの家」の元スタッフともう1人が臨時警官に採用され、外部からの人間の監視、外国人ツーリストの護衛などの任務につくようになりました。
さらに昨年春には、国境を守るためということで、ルンブール谷には数百人規模でパキスタン陸軍が駐留し始めました。その際、兵士の駐屯所や寝泊まりする小屋が必要となり、上流の高台に大急ぎで造ったそうですが、その資材としての石を、道路沿いにある崖をダイナマイトで壊して大量に持っていったということです。
発電所の真上は岩盤なので土砂崩れが少ないから発電所を建てたのに、兵士たちは建築用の平たい石がたくさん取れるし、道路沿いで運搬しやすいということで、そこを集中的に壊したのです。
堅かった岩盤はがくがくになり、下部を持っていかれて不安定な状態になってしまいました。地元の人たちは何度も「下に発電所があるから止めてくれ」と兵士たちに懇願しましたが、兵士は黙ってカラショニコフの銃口を向けて睨むばかりで、どうしようもありませんでした。そこに今年3月の長雨で地盤がゆるみ大規模な崖崩れとなったのです。
これだけではありません。兵士たちは軍馬を村人の畑に入れて作物を食べさせたり、木に実る果物をそっくり持っていったり、カラシェニコフを手に、好き勝手に地元の貴重な資源や作物を荒らしたということです。
谷を守るどころか、兵士自身が逆の行為を行い、地元の人たちに損害を与えています。冬の間、兵士たちは谷から一時引き上げていたのでほっとしていましたが、4月上旬に再びやって来るということです。
「駐留するなら、住民のいない国境の山頂できちんと見張りをしてほしい。住民から食料や資材を調達するなら、きちんとお金を払うべきだ」と住民たちは言っています。本来なら発電所のタンクを壊した弁償をパキスタンの軍にしてほしいところですが、チトラール地方の長官に、軍に話をしてくれるよう訴えても、何も行動を起こしてくれないそうです。