いやいや、なんだかいかがわしい宿に?
13日夜明け前にバンコク戻ってきました。
15日の夜中(あるいは16日の未明)にイスラマバードに飛ぶんで、
今回はカウサーンには用事はないし、別なところに泊まろうと、agodaで検索して、
MRTスティサン駅の近くの宿に予約していたのですが、来てびっくり!
それは古い大きいビルちゅうかアパートというか、そんな建物の2階の奥まったところにあったんですね。しかもその宿は、そのビルの守衛のおっさんも知らなかったという、何かいかがわしい感じのバックパッカーの安宿でした。(agodaの宿の紹介ではビルの2階って書いてないし、写真も全然感じが違う)
で、朝早いといっても8時は過ぎていて、台所なんかは開けっ放しになってるのに、守衛のおっさん(私の荷物を持ってついてきてくれた)がいくら呼んでも誰も出てこない。辺りはビールの空瓶や灰皿やらが無造作に置いたままになっている。日除けのパラソルなんぞはビリビリ破れている。すぐ目の前には巨大な建物が建設中で、その工事の騒音がカーンカーンと鳴り響いている。
「こりゃあ、しまったことをした!」と着いて3分後にここを予約したのを後悔した。でも、agodaを通じて、泊まらなくても金は引き落とされるので、わざわざ損するのは好きではない私は、一応部屋を見ることにした。
守衛さんが再度バンバンと戸を強く叩いて何度も叫んだら、中からキャラの濃い、少ない髪を後に結わいたおっさんでてきて、「アキコサン?アキコサン?」と日本語で言うではないか。「いままで寝てたんですか」と呆れてきくと、悪びれず「はい」と言う。その頃はもう9時近くになっていたのにです。
「少し待って下さい」とまた中に入っていって、10分ぐらいして出てきてから、「どうぞ」と一番手前の部屋を開けるのです。入ると、わりあい広くてがらんとした部屋があり、勉強机と椅子、ソファー、冷蔵庫が置いてあった。小物がいろいろ置ける棚もある。でも肝心のベッドが壁にへばりついたような2段ベッドなのだ。ネットで紹介されていた部屋の写真とずいぶんかけ離れている。
「ちょっと、ちょっと、これはドミトリーじゃないないですか。私はシングルルームを予約したんだんだけど」と言うと、おじさん、奥のドアを開けて左のシャワー&トイレ室を見せながら、さらに奥の部屋を見せて、「ここも全部あなたが使っていいから」と言うのです。
奥の部屋は手前の部屋より天井も低くて狭い。まん中にデーンと丸いベッドが置いてあり、ベッドの頭の壁と入口の壁の2面には鏡がはめ込まれ(壁全体ではないが)、ベッドの足元の壁には大きな鏡台があるから、洋服ダンスが置いてある壁以外は3面が鏡なのだ。おまけに上を見たら、なんじゃあ!天井にも鏡がはめ込められているのだ。なんだかこりゃ、連れ込みホテルみたいじゃないか。いかがわしい雰囲気はさらに深まるのです。
「なんだか不健康な部屋ですねえ。窓もないし」と私が不満そうに言うと、おじさんは、「ほらほら、この戸を開ければ窓と同じですよ」と洋服ダンスの横の戸を開けてみせた。そこは路地の裏側といった風で、長年使ってなさそうな洗濯物干しハンガーやガラクタが雑然と置いてあり、とても開けたいという気持にはならない景色があった。「この裏戸から、泊まり客の秘密の客がそっと入ってくるのだろうか」と私はへんに想像を膨らませたりした。
でも、このおじさんを見ると変人風だけどイヤらしい感じはしないし、逃げ出して別な宿を探すほどの気力もなかったので(夜行バスでビエンチャンから着いたばかりでしたからね)、「私はこんなおかしな部屋は使いたくないです。こっちのドミトリーを使います」と宣言して手前の部屋に荷物を置いたのでした。
シャワー浴びて一段落して部屋の外に出てみると、他の泊まり客(西洋人たち)が台所の前でたむろしていて、「暑いよ、暑いよ」と言いながら、まだ午前中なのに、腕に入れ墨のある男はビールをラッパ飲みしていた。「オーナーのミスター・チョンはどこ?エントリーをまだ書いていないけど」と言うと、「ジョンのこと?どこに行ったかねえ。エントリー?別にしなくていいんじゃない」と言われた。
さっき名前を聞いたときチョンと聞こえたけど、どうもジョンだったらしい。ついでにジョンさんは1人でこの宿を切りもりしているそうだが、どうもあんまり勤勉に働く人ではなく、趣味でやってるような感じだ。だから、部屋中埃を被っていて、机と棚は私が自分でトイレットペーパーで拭いたくらい。バスルームの鏡の上には蜘蛛の巣がかかったまま。いやはや、こんな宿もあるんですなあ。
朝、部屋を案内してくれて以来、ジョンさんは外の戸も中の戸もすべて開け放しにして、どっかにドロンしていて、再び姿を見たのは夕方だった。台所前のテーブルで近所の友達とビールを飲んでいた。朝、「暑い、暑い」と言いながらビールを飲んでいた西洋人も、またビールを片手にやって来た。少し話をすると、彼はバッグパッカーではなく、長期滞在の学校の英語教師だとわかった。2週間の期末休暇で暇をもてあましてビールばかり飲んでいるもよう。
片腕には入れ墨があるし、朝からビールを飲んでいたので、すっかり何か社会から少しはずれている人だと思ったのは、こちらの早合点だった。入れ墨しているから普通の人間ではないと思うのは、まったくのまちがいなのです。入れ墨で人を判断してはいけません。
そう言えば、今や西洋人の若い人の半分以上は、おしゃれのつもりでどこかに入れ墨をしているのではないでしょうか。私自身は入れ墨がきれいだとは思わないし、どっちかと言うと嫌いなのですが、それぞれの趣味の問題ですから、それを理由でどうのこうの言うのはおかしいと反省しました。
夜の8時過ぎに、付近の屋台で食事しようと外に出たが、屋台はほとんど閉まっていた。肉入りラーメンはあったけど、私はベジタリアンになったからねえ。どうも日曜日はこの辺の屋台はお休みのようだ。
それで宿も戻って、ジョンさんに「こちらで食事はできますか?」ときいたら、「いいですよ」との返事。昼間のぞいたら、冷蔵庫が数台置いてあるりっぱな台所だったから、作れないことはないだろう。「野菜ヌードルでいいので、お願いします」と私が焼きそばを思い浮かべながら頼むと、ジョンさんは飲みかけのビールをテーブルに置いたまま、立ち上がって台所に入った。
自分で持ちこんだと思われる、パックに詰めた吉野家の牛丼みたいなものを食べながらビールを飲んでいるジョンさんの友達と話しながら待つが、台所で行ったりきたりしているジョンさんの忙しそうな気配は伺えるが、なかなかヌードルは出て来ない。タイの麺はできるのがすごく早いはずなのに。
そのうちジョンさんが冷凍した大きな塊を電子レンジに入れたのが、開けっ放しの戸から見えたので、「すみません。それは肉ではないですかあ?私は肉は食べませんからあ」と大声で言うと、間に座っていた友達が大声でつないでくれて、ジョンさんは肉の塊をレンジから出して、また冷凍庫にしまう音がした。
その後もまだ出てこない。それから10分ぐらいして出てきたのは、ゆでかげんが良い具合のゆで玉子2個と野菜入りのラーメンだった。今までタイで食べたことのないスープの味だったので、即席ラーメンではないかと思うが、麺も多くておいしかった。ただどうしてあんなに時間がかかったのかが不思議だ。自分が飲んでいたビールを生ぬるくしてまでして、一生懸命奮闘して作ってくれたラーメンのお代は40バーツで良心的な値段だった。
朝に着いて、2泊して、3日目の夜10時までの長い滞在で、昼間外をぶらついた後は、ドミトリーの部屋の冷房をつけて、机に向かってネットをやり、寝る時は、ドミトリーの2段ベッドはなんだかずっと使ってないようだったので、結局、シーツが新しく交換された形跡がある奥の部屋の丸いベッドで寝ました。この部屋も冷房付きです。1晩目は鏡が多すぎて、やはり寝付きが悪く、東京の職場や高校のクラブの連中、はたまた父親までが初登場するおかしな夢を見てしまいました。
2日目、3日目の朝とも、ジョンさんはビールを飲んでましたが、だらだら飲んでるわけでなく、その後いなくなってしまい、夕方まで、ジョンさんとも、泊まり客とも、長逗留の英語教師とも会わず、部屋の外はカンカン照りでシーンとしていました。もちろん台所もその奥の部屋も開け放しのまま。夜になると、台所の前のテーブルに泊まり客やジョンさんの友達が集まり、ギターを弾いたり、おしゃべりしたりしています。2日目の晩には、祖国を8歳の時に離れ、スエーデン国籍を持ち、今はカンボジアで商売をしているイラン人の泊まり客と話をしました。
というわけで、ジョンさんはビール好きの酔っぱらいということはおのずと判明したわけですが、客に対してまったく放任主義で干渉しないし、ううむ、この宿は初めの印象よりはそんなに悪くはないと最終的には思いました。確かに変わってはいますがね。でも、今度バンコクに来る時は、別な宿にしたいです。
いつものように、バンコクの証拠スナップ写真です。
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