冬だ、冬だと思っているうちに、あれれ、春分の日になり、それまで1時すぎると目の前に迫る山の向こうに姿を消していたお陽様が、3時半ごろまで日陰の村と言われるバラングルを暖かく照りつけてくれるようになった。すぐに桜に似たアンズの花が咲き始め、その後にりんごや梨の白い花が満開になっていく。やっぱり春はいいな。エネルギーが満ちあふれている。村の人々も上流、下流それぞれの畑に行って、石拾い、耕作作業、種まきを開始する。それにしてもねえ、もう4月になったとは信じられないよ。
私が何をしているかと言えば、冬の間の1月、2月は電気がついてる間はパソコンで画像や動画の編集をしたりして、昼食後、下の図書室が開く時間になったら、図書室のストーブの横の机に座って、子供たちが声をあげて本を読んでいる中、時々「ほら、うろうろしないで座って読書をしなさい」など注意しながらも、黙々とクラフト作業をしていた。
ハンディクラフトを作るといっても、クラフト作りに携わる女性たちを掛け声かけて呼び集め、じゃんじゃん作っても(といってもしれた数ですが)、この数年はパキスタンの治安事情で旅行者が来ない(来れない)ので、売りようがない。このクラフト活動は私個人が行っていて、女性たちの賃金は私が支払っている。数年前に一時帰国する際に女性たちもお金が必要だろうと、前金を払ったのがまだ一部回収できないでいたりする。
賃金、材料費などから割り出してクラフトの値段を決めて、その2割を「AKIKOの家」の活動費として上乗せして総合的な値段にして売っているが、私自身は、クラフトのデザイン、材料調達、見本作り、手まわしミシンの管理・修理、女性たちへ指導・指示、出来上がった品物を洗い、クラフトの説明や値段の札作り、帳簿の管理、販売のセッティングなどなどに費やす手間や時間を考えると、時給何十円ぐらいにしかならないのです。とほほ。
それでも糸や布を織り、縫い作り上げる、あるいは創り出す作業は嫌いではない、というよりむしろ好きな方だし、これをやらないとなると、他にはちょろちょろ写真や動画を撮り編集するくらいで、自分の表現活動が狭まる(というほどのものではないけれど)。日本で同じようなクラフト作りをやることは環境的にまず無理ということもあって、冬のバラングル村ではクラフト作りに精を出しているわけです。
5月の春祭りには、村のサイフラー・ゲストハウスにイギリスからのツアー客の予約が入っているときいたので、ツアー客に買ってもらうために、3月からクラフト隊2人を2階の私の部屋に呼んで、コースターなどの売れ線の物を縫ってもらっている。私はそばで指示しながら、織り紐を縫い付け、まわりに模様をあしらった〝ぺったんこケース”を作っている。他に、数人の女性たちに伝統的織り紐、チトローヤックや模様織り紐を織ってもらったりしている。
それにしても、物価の値上がりには驚くばかりだ。数年前、中国製ビーズ一袋450グラム入りが確か70ルピーだったのが、今は200ルピー。東欧製のビーズも同じ量でなんと800ルピーにもなっている。カラーシャ女性の民族衣装の黒い布、ミシン糸や毛糸も平気で2〜3倍高くなっている。人件費もそうなので、女性たちの賃金も高くなる。だから当然クラフト製品も高くしなければならないわけだが、外国人の感覚からすると、発展途上国の土産物は安いと思い込んでいるので、私たちのクラフトは高く思えるだろう。質の高さも以前よりも、他よりも断然良くなっていることを理解してくれる客だったら、喜んで買ってくれるはずだが、一般の外国人旅行者は「パキスタンの山奥の製品は質が悪かろう、値が安かろう」と上から目線で見るので、売る方もなかなか売りにくいのです。
もし、私たちのクラフトに興味をお持ちの方は、メールでお知らせ下さい。日本に在庫が少しありますし、今回の一時帰国で持てるものは持っていきますよ。
いつものように、写真はこちらでご覧下さい。
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