2017年4月29日
今回の一時帰国は短期にして早めに冬期にルンブール谷に戻ろうと思っていたのに、パソコンのトラブルで一ヶ月半遅れ、そのまま何やかんやでズルズルとあるいは超特急のように時間は経ち、パキスタンへの出発は4月の末になってしまった。
先月出版社を通じて知り合ったノンフィクション作家の古庄弘枝さんが今回私に同行され、ジョシ(春祭り)まで滞在なさる。古庄さんは、「スマホ汚染」鳥影社、「見えない汚染「電磁波」から身を守る」講談社+α新書、「モー革命ー山地農薬で無農薬牛乳をつくる」など、環境やジェンダー問題に取り組んだ著書や記事を多く出されている。最近は特に携帯電話・スマホの電磁放射線被曝の警告を発信されている。
古庄さんは旅行に出るときは各国、各地の電磁放射線を測るために計測器を所持される。イスラマバードに夜中に着き宿泊したゲストハウスの部屋でさっそく測った数値が、びっくりするほど高い数値で、危険の赤に近い黄色になる。Wifiのせいもあるだろうとゲストハウスのマネージャーにその旨説明し、廊下のWifiのルーターのスイッチをオフにしてもらう。しかし数値は変わらない。部屋を変えてもらうにも他の部屋も同じく数値が高くてどうにもならない。このゲストハウスには8個のルーターを設置しているとのことであった。
翌朝、ゲストハウスの廊下の突き当たりのベランダに出て周辺を見渡すと、閑静な住宅地が広がっている。しかし何とまあ、すぐ目の前、百メートルあるかないかの距離にデーンと携帯電話の基地局が立っていた。(忌野清志郎の〝サマータイム・ブルース”を思い出してしまう)
マーケットエリアに出てみると、あった、あった。ビルの上に基地局がニョキニョキ状態で立っている。そして日本の繁華街と同じくそこここの通りで人々が携帯を耳に当てて話をしている光景が見られる。
世界中に大変な勢いで広がってしまったスマホは発展途上国といわれるパキスタンでも、今や持たない人を探すのが難しいほどになっている。首都のイスラマバードでいつも世話になるファジアの家でも、家族5人はもちろん、お手伝いさんも当たり前に持っている。その代わりに二年ほど前まで置いてあった家の電話はなくなっていた。環境問題に意識が高いファジアたちに、古庄さんがスマホ汚染について書いた小冊子を見せながらスマホの危険さを説明するが、その時は鋭く反応しても、用事が多いファジアはほとんどの時間スマホを手放さない。
4月30日(日)イスラマバードから飛行機はチトラール空港に無事に飛んでくれる。イスラマバード空港でも、飛行機内でも、チトラール空港でも古庄さんの電磁放射線計測器は思った以上に高い数値を示した。機内では飛行機に慣れている私も何だかムカムカして具合が悪くなったほどだ。チトラール警察署で外国人登録を済ませてから一息入れようとマウンテン・インの庭に落ち着いたら、「すごいよ。ここも線量が」という古庄さんの驚きの声。見るとここにも目の前ににょっきり1本、逆の方角の女性と子供専用の病院のすぐ上には3本もの基地局が立っている。これらに囲まれているから庭のどこに逃げても線量は辺境の町チトラールは小さいだけに低くなるはずがない。せっかく花が咲き乱れる庭で休憩するのが、見えない電磁波が脳や体を貫通していると思うと落ち着かなくなる。
スマホからでている電磁放射線は、 WHO(世界保健機関)の組織IARC(国際がん研究機関)から〝発ガン性物質”と認められている。原発や原爆からでる放射線と同じように、長年のべつ幕なしに浴びていると、脳、心臓、生殖器をはじめとしてすべての臓器や神経系に異常が起こり、がん、アトピー、うつ病、不眠症、関節リウマチなどの病気を引き起こしやすくなる。特に細胞分裂が活発な赤ん坊や幼児ほど深刻な悪影響を受ける。もし、赤ん坊や幼児が日々を過ごす部屋に無線LANがあれば、すぐに取り外すよう古庄さんは訴えている。
しかしスマホや無線LANの危険性をほとんどの人が知らず、メディアでも取り上げられない。政府は逆にオリンピックにかこつけて、都会においてはどこででも無線LANが通じるように力を入れている。海外では影響を受けやすい子供に対しては携帯電話の規制や勧告がなされているのに、日本では無線LANを教室に飛ばす小学校もでて来ている。教育のためにコンピューターが必要なら無線ではなく有線にするべきというが、世の中は大気が有害な電磁波放射線に覆われつくされる事態に向かって走り続けている。まるでSFの世界だ。