庭に積んである古材の下で生まれたタローは6月2日で3歳になった。とにかくいっときも落ち着かず、ぴょんぴょん跳びかかるし、散歩に連れて行ってもまず歩くということを知らずダッシュのみ。きっと猟犬の血が濃いのだろうと思うが、1歳になってもなかなか大人しくならなかった。「いつになったら落ち着くんだろうか」とヤシールに愚痴をこぼすと、「犬は3歳になるまではこんなもんだよ」と言われて、「えー、あと2年も持つのかよ」とがっくりした記憶がある。
今タローは3歳を越えた。ダッシュばっかりだったのが多少は歩くこともするようにはなったが、猫は生まれつきのライバルらしく、猫を見つけると人の家の中だろうが、屋根上だろうがすごい勢いで追って行く。しかし一度も猫を捉えたことはない。追い詰めたときに猫から爪でアタックされて泣き喚いたこともあって、本心で捉えるというより追いかけっこを楽しんでいるようだ。
それを知っている村のいたずら小僧たちが「タロー、タロー、プーシャック、プーシャック(猫)」とかまけると、飛んで行くし、犬を怖がるムスリムの人や袋を背負ったカラーシャおじさんを見ると吠え、相手はビビって蹴ろうとしたり石を投げようとするとさらに喜んで飛びかかって行き、しまいにおじさんたちの服を破ってしまったりする(噛みつかないが)のが問題だ。つなごうにも、意外にも頭が小さくて首輪がスポッと抜けるので無理だから、階段の途中に戸をつけて、昼間は外に出さないようにしているので、部屋の入り口で寝ている。あまり暑くなると部屋に入って寝ている。冬の間はサジャットの父さんについて山羊の放牧に行っていたが、夏の放牧場までは行きたくないようだ。日本の犬よりは自由でいいかもしれない。