隣国アフガニスタンでタリバンが復権する/Talliban regained power in Afghanistan

 例年8月22日に開かれるウチャウの祭りが何事もなく終わり、ルンブール谷は秋の収穫シーズンに入った。ちょっと前に冬のチョウモスの祭りが終わって、早く春にならないかなと思ってたのに、もう夏に別れを告げる時期だ。

 

 

  というか、今年は夏そのものが短かった。曇りの日が多くて、温度も上がらず、30度(室内で)に到達した日は1日しかなかった。世界中で猛暑が記録されるのに、ここではずっと20度前半の日が続き、快適で過ごしやすい日々だった。しかしカンカン照りの真夏というのが全くないのも何か物足りない気がする。

 

チトラールは平穏

 8月15日に山向こうのアフガニスタンの首都カーブルがタリバンに制圧された。あれよあれよと言う間にタリバンが権力を掌握したのだが、こちらには何の影響もなかった。2009年にパキスタン・タリバンがスワット地方を占拠して以来およそ10年間、セキュリティが厳しくなり、その前はルンブール谷には一人もいなかった警官が大勢駐屯するようになり、うちの村の若者も10人以上が警官になっているが、2年前に、外国人には必ず護衛がつく制度が外され、チトラール警察署での外国人登録も必要がなくなり、外国人旅行者はかなり自由に動けるようになった。

 

 今年7月には、隣のアフガニスタンでアメリカをはじめとした西欧諸国の駐留部隊が撤退を始めて、タリバンが国内で復権しつつあったのに、先のブログに書いたように、私の護衛警官が外されそうになった。以前は、非ムスリムのカラーシャの祭りの際は、タリバン、アルカイダ、IS(イスラム国)たちがアフガニスタンから山越えをしてきて、踊り場に自爆テロを起こす可能性があると随分警戒し、警官だけでなくパキスタン軍やチトラール兵が大勢、祭りを取り巻いて警備に当たっていたのに、先のウチャウ祭には、警備兵よりもパキスタン人ツーリストが俄然多かった。つまり、アフガン国境に近いカラーシャ谷のセキュリティは強固されるどころか緩くなり、タリバンが国境を越えてやってくるなど想定外という雰囲気なのだ。

 

 BBC、New York Times、朝日、毎日などのニュースでは、カーブルのカルザイ空港での大混乱ばかりを流して、やたら恐怖を煽っているように見える。確かに昔のタリバンの恐怖政治を知る人たちが国外に逃れたい気持ちは良くわかる。カルザイ空港周辺に群がり、その混乱から引き起こされた災難には心が痛む。しかしその事象をニュースの種にして、これでもかこれでもかと世界に発信するのはいかがなものかと思ってしまう。

 

 タリバンの肩を持つわけではないが、タリバンが戦闘なしにカーブルを掌握したという事実、女性の教育と働く権利も認める、これまでアメリカやNATO側で働いていたアフガン人には恩赦を出し、共に新しい国づくりに尽力しようという発表にどうしてもう少し注目しないのだろう。これら全てがタリバンの本心なのか疑問はあるところだが、これらが実現できるようにメディアもアメリカも仕向けていくことこそが今の段階で最優先なのに、空港の無秩序などマイナス要因ばかりを報道している。

 

 いったい、アメリカ兵に訓練され立派な兵器を持っていたはずのアフガン正規軍はどうしたのか?車4台分の現金を持って早々に逃げ出したガニ大統領の責任はどうなっているのか?ガニ大統領は現金持ち出しについては否定しているが、それについても、みんながスマホで写真を撮る今の時代、証拠写真の1枚ぐらいはあるだろうから、もう少し掘り下げた情報を知りたい。

 

 だいたい、アメリカを始め西欧諸国は20年間、アフガニスタンで何をしていたのか。私は2001年当初からアメリカの軍事介入自体がおかしいと思っていたし、アメリカ軍の撤退はもっと前になされるべきだと思っていた。アフガニスタンはアフガン国民に委ねるべきではないかと。

 

 イスラム教を基盤とする国家をアメリカなどのよその国が否定してああだこうだと口出しするのはどうもおかしい。それなら、サウジアラビアなどのイスラム国家にも介入しなくてはならなくなるはずだ。サウジアラビアも女性の自由度に関しては閉鎖的で、最近ようやく女性が車の運転ができるようになっているくらいだ。アメリカの行う軍事介入は正当性が見えない。

 

 もちろん以前の原理主義的で狂信的なタリバンの恐怖政治は大反対である。現タリバンは女性の権利を認め、新しい国づくりに女性も活躍してもらうと言っているので、それが本心なのかわからないところがあるし、変わらないと国外からの国づくりのための支援をもらえない現実を踏んでのことだろうが、以前より改善されていると思える。ただ、タリバンのリーダーたちが穏健で人権に理解があっても、タリバンの末端の兵士までそうとは限らないだろうから、しばらく国内は混乱すると思う。とにかくこのまま戦闘なしで着実に国づくりが成されていくことを願うばかりだ。アルカイダやイスラム国を確実にアフガニスタンから追い出すことも忘れてはならない。

 

 とりあえず、昨日8月25日現在の感想です。

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