12月15日、朝起きたら周りの景色はうっすら雪化粧。よりにもよって女性の浄めの儀礼の日に雪とは、と若干重い気持ちになったが、その後雪は振らずに昼間はすっかり解けてしまった。
浄めの儀礼を受ける時には、女性たちは川原で髪を洗い結い、村の下方にある沐浴室で沐浴しなければならない。私は純カラーシャではないので、自分の家のトイレで、電気コイルで沸かした大バケツたっぷりのお湯を使って髪洗いも沐浴もできるが、村の女性たちは家で沸かしたお湯を水差しやヤカンに入れたのでやるので、量も少ないし、沐浴室の順番を待ってるうちにぬるま湯になって、体を洗うのもずいぶん寒いだろうなと同情する。
家族の男たちは女たちの儀礼を行うために、この儀礼用に轢かれた小麦粉とクルミで、一人につき丸型5枚と半月型1枚を焼く。母親、妻、娘3人だったら丸型25枚と半月型5枚焼くことになる。焼く前に手を水路の水で洗ったが最後、儀礼を執行し終わるまで、その手はいかなることがあろうとも他を触ってはいけないという決まりがある。例え自分の鼻先が痒くても手で掻いてはいけない。
村の多くの家族が、「AKIKOの家」の向かいにある第二の神殿で浄めの儀礼を行う。儀礼用のクルミパンが焼けたら、使いの子供が女性たちを呼びに行く。女性たちは正装用のクパースを被って神殿の前に行き、上流に向かって立つ。執行者は女性の手に水差しの水を3度ずつ降り注ぎ、その後5枚のクルミパンを持たせる。そして、執行者は片手に水を持って、火に焼べた聖なるネズの枝葉を女性の頭上で3回グルグルと回し浄める。全員の浄めが終わると、全員の半月型のパンをちぎって火に投げ入れると儀礼は終了する。
これで不浄の女性たちは聖なる状態になり、先祖の地からいらっしゃるバリマイン神を迎えることができる。聖なる状態になった女性たちは村の広場に出て、歌を歌ったり踊ったりしていたが、ここんところそれがない。というのは、バラングル村の人口が増え、世帯が多くなり、家がどんどん建って、広場が狭くなったという理由で、政府が村の下手に隣接する畑を450万ルピーで買い取り、そこを歌や踊りをする場にせよというわけだ。
そのため、これまでひょいと家を出て広場で即興で歌や踊りを始めて、それを聞きつけてさらに人が集まり盛り上がるというのがなくなってしまった。新しい畑地の広場は風向きの加減なのか、歌声が全く聞こえないし、だだっ広くて寒いので、ちょっとついでにというわけではなく、決心して赴かねばならないので、チョウモスの間中響いていた聖なる歌や囃し歌がすっかり消滅した感じがする。もちろん、祭りを引っ張る年配の女性たちが亡くなってしまったということもある。残念なことだ。