ラワク・ビイーク(キツネ脅し)/ Lawakb'iikーThreatening the fox

 バラングル村の広場の篝火の周りで一晩中、歌い踊り手拍子でバリマインを見送った後、12月18日は寝不足なのでお休みの日。私は徹夜はせずに早々に引き上げたものの、風邪の口実をつけて一日の多くを布団の中で休養。布団の中だと暖かくて、ストーブの薪も節約できるからね。

 翌日、12月19日はラワク・ビヒーク(キツネ脅し)の日。ボンボレットのブルーア村では裏山に登り、太鼓を打ちながらキツネを脅し、キツネを村まで追い込めたら、新年は良い年になるという。

 

 しかしルンブールではこの行事の由縁となるキツネ脅しは行われず、男女が仮装して踊ることのみ。男が女の衣装を着け、女が男の格好をするのだ。

 

 これまでチョウモス期間中、聖域サジゴールに一番近いバラングル村が歌、踊りの場であったが、バリマインが去ったので、この日は下流のバテット村の畑で歌、踊りが一日中繰り広げられる。

肉入りパンの日/ The day of Meat bread

  チョウモスの期間はたくさんの山羊が捧げられる。各山羊小屋から立派な雄山羊を一頭ずつ、谷全体で40頭ほど、プシャウマラットの日にサジゴールでバリマインの召使いのために捧げられる。

 

 捧げるといっても喉を切られた血のみだから、首がなくなった山羊の体は再び各山羊小屋に運ばれて解体され塩煮にされる。それと別に、男の浄めの儀礼のために山羊が一頭犠牲にされる。ゆえに、各山羊小屋では二頭の山羊が調理されるわけだ。

 

 ジャマットの山羊小屋は分家した四世帯が一緒に山羊の世話していて、男の数は大人10人、子供5人である。女は口にできないので、この男の数だけで山羊二頭を丸々食べるのだから、ちょっと贅沢過ぎだ。

 

 村では、子供の通過儀礼をした家で山羊一頭ずつ犠牲にして塩煮の肉、モツ、肉汁ポタージュを配る。これは女も食べてよろしい。今年は村では二日にわたって計21頭の山羊がさばかれた。

 

 二頭ずつ塩煮にされたり、どこで調理されてるか情報がうやむやだったりで、すべての分け前をもらうことは不可能ではある。私は特に風邪で食欲がなかったので、積極的に分け前を預かりに出かけず、もちろん私のために取って追いてくれた肉塊をいただきはしたが、男たちに比べると微々たるものだ。

 

 男の世界である山羊小屋では、チョウモス最後の日、12月20日にモモ肉を使って肉入りパンを焼く。村でも女たちは通過儀礼でさばいたもも肉を取っておいて肉入りパンを焼く。肉がない家にも肉の一部をもらったりするが、今年は私は焼き上がった肉入りパンをもらった。コリアンダー、唐辛子、ザクロの種、塩の調味料がよく効いていてなかなか美味しい。