先日、階下のキラン図書室のことを書いたら、書く話題がなくなった。
いや、カラーシャの冬のスポーツ、ガル(ゴール)(雪の上で競技するホッケーのようなもの)のトーナメントでうちの村が首位を取ったので、褒美として牛を捌いて煮て食べ、村人たちは昼から夜じゅう、太鼓と笛の伴奏で踊りまくっていた。(私は参加しなかった)
とか、親戚の嫁さんが赤ん坊を出産して、彼女の家でお祝いにチーズとタシーリをもらった。とか、現在、「生理・出産の家」には5人の女性が出産して家に戻るまで暮らしている。とか、日々何かしらの話題はあることはあるが、長年住んでるこちらとしては新しい話ではない。
しかし、人口構成がピラミッド型のカラーシャ社会ではあるが、ここ数日間で生まれた赤ん坊が5人とは多いね。日本のように子供の出産率が低いのも心配だが、こちらのようにどんどん生まれてくるのも、限られた土地や畑で生きていかねばならないこの子らの将来はどうなるのだろうと危惧してしまう。
ま、それはそれで置いといて、今回のブログの話題は「広がるメニュー」にしよう。
2019年の9月に一時帰国していた日本を出て、早、2年半。日本が農薬や危険な除草剤の使用率が欧米諸国に比べて断トツに高いと知って、最近はあまり日本食が恋しいとは思わなくなっているものの、日本ならでの海の幸の刺身、魚料理はさすがに「食べたい!」と思う。
それで、ある時、朝の早朝タローを外に出してやって、再び布団に戻って1時間ほどウダウダしている時だったと思うが、ふと思いついたのだ。「干物ができるのではないか」と。
ここのところ、チトラールの町角で生魚が売られるようになった。産地はトルベラ・ダムらしい。チトラールで泊まりの時に、食堂のフライドフィッシュを買って宿の部屋で食べたりしていたが、塩や香辛料、油がきつすぎるし、川魚だからY字の骨がやたらと多くて、食べてるのだか骨取り作業をしているのかわからなくなり、今ひとつ満足感に欠ける。
生魚を買って帰るにも、乗り合いの車に人も荷物もぎゅうぎゅう詰め込まれて、乗ったり降りたり3時間の帰路で揺られ続けたビニール袋の魚の切り身は、海に囲まれた島国日本でから来た人間にはもはや食欲はそそらないだろうと、買う気がしなかった。(えらい昔に一度買った記憶はあるが)
しかし今は寒い冬、鮮度もそんなに落ちないだろう。持参したタッパーに切り身を入れればそんなにグチャグチャにはならないだろう。そして私には日本から持って来た干物、ドライフルーツ用の網があるではないか。それに入れて陽に干すか、あるいは薪ストーブの上にぶら下げていれば干物が出来るはずだ。どうして今まで思いつかなかったのだろう。
考えてみれば、イスラマバードの日パ旅行社の督永さんが、カラチに用事がある時はアイスボックスを担いで魚市場からたくさんの魚を買って来ていらした。アジなどは開いて、空いている部屋に紙の上に並べて、天井から吊るしてある扇風機をビュンビュンかけて干物を作っていらした。イスラマバード だからかなり暑いので、外か屋上に干せばいいけど、それだとカラスに持っていかれるらしい。私も食べさせてもらったが、室内作の干物は美味しかった。
チトラールで売っている魚は川魚なのだが、今回試してみることにした。チトラールに出た時に買った魚は長さ25cmほど。1kg300ルピー、1匹220ルピーだった。急激な物価高のこのご時勢ではむしろ安いと思った。
頭を入れて6切れの切り身をタッパーに入れて、ビニール袋で包み、米や野菜などの買い物一緒にバッグに入れて、ルンブール行きのオンボロ車の屋根に乗せて帰って来た。魚は無事だった。頭ともう一切れは野菜と一緒におすまし風スープにしたが、とても美味しかった。もう一切れはフライパンで焼いたが、これも美味しかった。
そして肝心の干物だが、焼酎を醸造した滓に少しつけ、塩をして干した。始めは少し魚臭さが周りに漂うが、空気がめちゃくちゃ乾燥しているので、すぐに臭いもなくなり、2夜干しも3夜干しもいけた。骨取りは相変わらず面倒だが、美味しさの方が優っていてそんなに気にならなかった。今度チトラールに行ったらもっと魚を買って来よう。
ちなみに、チトラール地方の川では「鱒」が獲れる。もちろん、ルンブールの川にも鱒がいることはいる。下流の谷沿いにアユーンの水力発電所があるが、そこの水タンクの掃除がたまに水を止めて行われるが、その時けっこうの数の鱒が獲れると聞く。その時は私もお金を出して買うから事前に教えてくれと言ってあるが、未だに鱒にはお目にかかっていない。
鱒だったら、炭火で塩焼きですな。美味しいだろうなあ。