あらあら、もう明日夏祭り/ Oh dear, Ucaw Festival will be held tomorrow

 7月19日にルンブール谷に帰ってきたので、1ヶ月ちょっと経ったことになる。7月いっぱいは、午後に階下のキラン図書室を開けて3時間ほどそこで過ごしていたが、最近リタイアを自分の中で宣言したので、8月に入ると妙に自由時間に溢れ、自分のことをやろうにも、やらなければやらずに済むわけで、ほとんど無気力で過ごした感がある。予期せぬ平出さんと中島さんのK2での事故がさらに気分を重くしたこともある。

 気がつけば夏祭りのウチャオはもう明日に迫っている。祭りの際に新調するカラーシャの民族服もこのところしてない。2、3年前のチョウモス祭で縫った服を着るしかない。リタイア・モードになったら、かなりの部分で「どうでもいい」気分になっている。

 

●一年ぶりのサンドリガ

 気分低迷だし、外は暑いだけでなく、近所の家を訪ねてもハエが多いしで、どうしても部屋に閉じこもってしまう毎日。こういう生活を続けていると本物のヨロヨロ高齢者になってしまうと一発奮起して、先週日曜日にサンドリガに行くサジャットの母さんと子供たちについて行った。ヌーリスタンの村に続くメイン道路(といっても幅数メートルのデコボコ道だが)から支流の沢沿いの石だらけの道を登った先に開けたところがサンドリガで、ジャマット一族や親戚が夏の畑地として住んでいる。

 

 今や谷の村々には電気が通り、携帯電話も使え、車も10台以上あるようになっているが、サンドリガは私が来た頃の30数年前とほとんど変わっていない。電気もなく、携帯電話も通じず、聞こえるのは湧水から引いた灌漑水路の水の音と、小鳥のさえずり、時々牛の自己主張のいななきぐらいで到って静かで平和な環境である。昨年の土石流被害でほとんどの畑地を流されてしまって、今年は家畜の餌になる草を蒔いてるだけだが、子供の学校が休みの日曜日に、その荒地の草に水をやりに来るサジャットの母さんも、「ほんとに私はサンドリガが好き。いったんここに来たら村に帰りたくなくなるよ」と言うほどだ。

 

 ジャマットのミルク用に群れから離されて、私の目の前の牛小屋で飼われている雌ヤギも、世話係のサジャットの弟アリに連れられてサンドリガに来ている。もちろん犬のタローも。アリは勉強はできないが、カラーシャの男の伝統仕事は好きで、小さい斧を片手に柳の群生を歩きまわって鍬用の柄を切ったりしている。私もいずれ挑戦したいと思っているうどん作りの麺棒用に柳の枝を切り出してもらう。たかが棒に過ぎない物でもチトラールの町の金物屋では商品として売られているもんね。自給自足の精神、大好き。

 

 私は親戚の草地に寝転んで、目の前に聳える4000メートル以上の山々を見ながら昼寝をしていただけだが、大いに気分はリフレッシュ出来た。ただ標高差数百メートルの帰り道は、歩いてる最中に膝から太腿にかけてブルブル震えて力が入らず往生した。一方、8月に4歳になったばかりのマララと数ヶ月年長のスエミのチビたちは親に手を引かれなくてもどんどん、ピョンピョン下山していく。こうやって子供の頃から体が鍛えられていくんだなあ。私はもうダメだあ。下りは多分1時間半ぐらいだったか、とにかく家に帰り着いてよかった。

 

 

弓占い /  Hearing conclusion by swinigng bow

 8月13日、マシャールの3女が生まれた。ほんのこの前まで学校に通っていた子供だと思っていたのに、マシャールは嫁さんもらって1男3女の父親になってる。その前日には近所のルイックにも男児が生まれている。こちらは3男1女だ。翌々日にはロシティマの3男が生まれている。彼女も3男1女の母親になった。私が一時帰国で留守の間にルンブール谷では5名が他界したが、そのお返し以上に子供が産まれてくる。

 

  谷には前々から母子保健係のカラーシャ女性がいて、避妊の促進などを担当すべきなのに、彼女自身がその仕事についてから5人の子供を持ったし、昨年末には別に「家族計画」のオフィスが村に設立されているが、そこで働くグリスタンは、「開設以来、患者は先日にグジュール(定住した遊牧民)が1人来ただけ」という。スタッフは一応3名だが、スタッフもしょっちゅう休んでいるから、ほとんど機能していない。

 

 マシャールの赤ちゃんはチトラールの病院で生まれたが、すぐに谷のバシャリ(出産・生理の家)に連れ戻された。母親が発作持ちで、バシャリでも発作が度々起こり、初めはおっぱいも出ず、赤ん坊はずーと泣いていた。

 それでマシャールの母さんは孫がどうして泣くのかを、簡単な弓を作り、それを手にして精神統一して占う。前日はムスリムに改宗したひいお爺さんが出たので、モスクにパンとチーズを持って行ったが、効き目がなかったので、再び弓で占うことになった。今回は4年前に亡くなったダジャリの母さんが出たらしい。カラーシャだから墓地の端に小さいパンとチーズを捧げる。